第二十二幕 ウェルギリウス『アエネーイス』




紀元前のローマ帝国詩人、ウェルギリウスの作。

ラテン文学の最高傑作とされる。

ラテン文学の最高傑作と呼ばれる『アエネーイス』っす。紀元前1世紀に成立した叙事詩で、作者はウェルギリウスっす。
小澤月子
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玉置小絹
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ウェルギリウスは同時代人のオウィディウスと比較されることも多く、現在でも本国イタリアでは多大な支持を得ている。
ウェルギリウスはギリシアの叙事詩人、ホメロスを非常に尊敬していたと言われる。そのために、『アエネーイス』には『イーリアス』と『オデュッセイアー』の影響が強いとされているっす。
小澤月子
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玉置小絹
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この作品の物語自体、『イーリアス』の続編とも言える立ち位置だからな。
ホメロスはアカイア勢(ギリシア軍)を主役に取っていましたが、ウェルギリウスはその敵方、トロイア勢の物語を中心に置いているっす。
小澤月子
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玉置小絹
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そのなかでも、主人公と言うべき存在はトロイアの王子、アエネーアース。『イーリアス』においても、敵方の将でありながら、英雄として描かれた人物だ。
『アエネーイス』は全十二巻から成るっす。前半の六巻が『イーリアス』、後半の六巻は『オデュッセイアー』を意識して書かれた、と言われているっす。
小澤月子
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玉置小絹
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この物語の前半部分はトロイアの陥落に文章を割いている。『イーリアス』はアキレウスとヘクトールの一騎打ちと、ヘクトールの死体の受け渡しまでが書かれたため、『アエネーイス』はその後の物語ということになる。
物語の視点はアカイア勢からトロイア勢に移っていますがね。トロイア陥落を巡る物語のなかに、有名な挿話であるトロイアの木馬があるっす。
小澤月子
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玉置小絹
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アカイア勢の英雄の一人、オデュッセウスが考案、実行を行ったというあれだな。
このトロイアの木馬によって、トロイアの最重要拠点であるイーリオスが陥落する。そして、トロイア勢から見た、アカイア勢による市中の蹂躙が描かれる。このあたり、ホメロスの詠った叙事詩よりも遥かに悲劇的に書かれていることが特徴的っす。
小澤月子
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玉置小絹
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ウェルギリウスがホメロスを尊敬していたことはすでに述べたが、その他の悲劇詩人からも影響を受けていたようだ。ウェルギリウスは『アエネーイス』において、古今の文学作品の技法を取り入れ、叙事詩の可能性を広げようとしていた節がある。
トロイアが陥落したあと、アエネーアースは父のアンキーセースと息子のアスカニウスを引き連れ、放浪の旅に出る。ここからが第七巻以降の内容になるっす。この放浪は『オデュッセイアー』を範に取っているとされるっす。
小澤月子
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新天地を目指す放浪のなかで、アエネーアースは様々な試練に遭遇する。このあたりの構図はトロイア戦争後、帰郷までに十年の歳月を費やしたオデュッセウスと同じっすね。
小澤月子
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玉置小絹
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トロイアを滅ぼしたトロイアの木馬を考案した敵方の将と同じ運命を辿るとは、皮肉な構成だな。
『アエネーイス』の後半部のなかでも、特に読者に強い印象を残すのはディードーの挿話っすね。ディードーはカルタゴの女王だが、流浪者であるアエネーアースに対して激しい恋心を募らせる。
小澤月子
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玉置小絹
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ディードーはアエネーアースに対して、カルタゴに残り自分と生涯を遂げるように説得する。しかし、新天地への野心を募らせているアエネーアースはこの提案を断り、カルタゴを後にする。
この後のディードーの行動が衝撃的なんすよね。ディードーは呪詛を吐きながら、自ら火の燃え盛る薪木に飛び込み、焼身自殺を果たす。
小澤月子
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玉置小絹
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アエネーアースがついにたどり着いた新天地はイタリアだった。そのイタリアではトゥルヌスという王が治めている。アエネーアースとトゥルヌスは新参者と土着の王という構図のもと、対立関係になる。
アエネーアースたちとイタリア軍の対立は再び読者に『イーリアス』を想起させるものになっているっす。物語の終盤、それぞれの人間関係はアエネーアースとトゥルヌスの一騎打ちに収束するように複雑化していく。この手法は『イーリアス』におけるアキレウスとヘクトールの一騎打ちと同じものっす。
小澤月子
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玉置小絹
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『アエネーイス』のクライマックスはアエネーイスとトゥルヌスの一騎打ちにある。そして物語はアエネーアースの勝利を予感させ、イタリアの新しい王になることをほのめかせたところで幕引きとなる。
史実とは異なるかもしれないっすけど、ウェルギリウスはアエネーアースこそがローマ帝国の始祖であることを示唆しているんすよ。
小澤月子
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