第十八幕 マイケル・カーティス監督『カサブランカ』




恋愛映画の金字塔の一つである作品。

数々の名言を後世に残した。

玉置小絹
玉置小絹
“Here’s looking at you, kid.”(君の瞳に乾杯)の名台詞で有名な映画、『カサブランカ』の紹介だぜ。
舞台は第二次世界大戦下のフランス領モロッコ。その中心に据えられている町の名前がカサブランカっすね。
小澤月子
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玉置小絹
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この映画、ラブロマンスに分類されるのだが、舞台が戦時下ということもあり、政治的な要素も多い。あくまで表向きはラブロマンスだから、そういう政治的なことは地下水脈のように作品の根底を流れているだけだが。
ヨーロッパ各地の人々がカサブランカに集まるのも政治的な理由っすね。ちょっと複雑になるっすけど、この時代、ヨーロッパの人々は安全を求めてアメリカへ亡命するものが多かった。
小澤月子
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玉置小絹
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しかし、フランスやドイツの管理下に置かれている状況では、あっさりとアメリカに飛び立つ、というわけにもいかなかった。そこで、人々は中立国であるポルトガルを一度、経由しなければアメリカに向かうことは難しかった。
地理的にモロッコとポルトガルは海峡を挟んで接しているっす。各国の政府もポルトガルが中立地帯になっていることはわかっているのだから、易々と渡航させる真似もしない。そこで、人々は一度、モロッコのカサブランカに滞在してポルトガルに渡る機会を見計らったんす。
小澤月子
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玉置小絹
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そういうわけで、この映画の登場人物のほとんどはアメリカへの亡命を希望しているものか、それを取り締まる政府側の人間だ。キャラクターの一人ひとりに政治的なバックグラウンドがあるから、初めのうちは人物関係がわかりにくいかもしれない。
主人公はアメリカ人のリックという男っす。この男は「カフェ・アメリカン」という酒場を経営をしていて、なかなかの成功を収めているっす。
小澤月子
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玉置小絹
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リックの酒場にはカサブランカで重要なポジションについている人物も訪れる。簡単に言えば、リックはそれなりのコネクションを持っている。だから、リックがやろうと思えば、数人くらい、政府の目を誤魔化してポルトガルに渡らせる、ということができる。
酒場で見せるリックの顔は商売人のそれっす。観客が初めて見るリックの顔も商売人としてのものっす。だから初め、自分たちはこのリックという男にそこまで良い印象は持たない。
小澤月子
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玉置小絹
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しかし酒場が閉店時間となり、オルガン弾きの相棒と二人だけになると感傷的な姿を見せる。リックは元々パリにおり、そこにはイルザという恋人がいた。ところがパリが陥落する前日、リックはイルザを置いたまま、ほとんど逃げ出すようにカサブランカへと渡ってきている。リックはそのことを後悔しており、酒を飲み、不安を紛らわせながらイルザの安否を気遣っている。
そして物語はリックとイルザが偶然、この酒場で再会するところから劇的に動き出すっす。
小澤月子
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玉置小絹
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イルザは再会したとき、ラズロという恋人がいる。この男、ドイツ抵抗運動の指導者であり、当然、各国の政府から目をつけられている存在っす。
イルザとラズロはヨーロッパにはもはやいられないところまで追い詰められており、そのため、アメリカに亡命するためにカサブランカを訪れた。そしてイルザの元恋人であるリックは二人をポルトガルに渡す通行証を手に入れるだけの力がある。このいざこざが物語の中心となっていく。
小澤月子
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玉置小絹
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リックはフランス人の警察署長、ルノーと懇意にしている。またアメリカ人という中立的な立場から、フランス政府に与しないと不利益を被ってしまう。リックは昔の愛のためにイルザとラズロをポルトガルへ逃がすか、保身のためにラズロを捕まえるか選択を迫られる。
物語の終盤、リックはルノーにラズロを逮捕するように唆し、その舞台を整える。ところがラズロを逮捕する手はずになっているリックの酒場にはいくら経っても誰も来ない。これはルノーを酒場に釘付けにしておいて、そのあいだにイルザとラズロを空港に送り届けるための罠だったんす。
小澤月子
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玉置小絹
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物語のラストシーンの空港、リック、ルノー、イルザ、ラズロが集結する。イルザたちはまさに飛行機に乗り込むところで、ルノーはそれを間一髪阻止しようとする。
ところが、このときすでに覚悟を決めていたリックはルノーに対して銃口を向ける。リックはイルザとラズロが亡命する運命に賭けたんす。
小澤月子
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玉置小絹
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結末は意外な形だ。フランス人でありながら、実はレジスタンスの賛同者だったルノーはラズロの亡命を見逃すことにする。イルザとラズロが乗った飛行機が飛び去り、空港にはリックとルノーだけが残される。
二人は連合国の未来に希望を実感しながら、それぞれ闇の奥へと消え去っていき、映画は幕引きとなるっす。
小澤月子
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