第十五幕 ニルヴァーナ『In Utero』



アメリカのロックバンド、ニルヴァーナの三枚目のアルバム。

ロック界全体でも問題作と言える出来となっている。

玉置小絹
玉置小絹
ニルヴァーナ三枚目のアルバムにして、最後のアルバムである『In Utero』だ。
別段、文句を言う気もないっすけど、二枚目のアルバム『Nevermind』の方が良かったんじゃないすか。知名度的に。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
確かに世界的な人気で言えば、『Nevermind』の方が上だ。だが、私はこのアルバムが好きなんだ。
それなら別に構わないっすけど……。それにしても、このアルバム、決して聴きやすいとは言い難いっすよね。それどころか、聴きにくい部類に入るまである。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
リーダーのカート・コバーンの意向が遺憾なく発揮されているからな。商業ベースに乗せることを意識した『Nevermind』から離れて、アンダーグラウンドへの回帰を指標にしている。その結果、やりたい放題とも言えるアルバムができた。
まさにグランジここにあり、って感じの出来っすよね。まずアルバム名のつけ方が普通じゃない。「In Utero」は日本語に直すと「子宮内」になるっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
音作りも全体的にヘヴィであり、テーマもポストアポカリプスや退廃など、インディーズからの影響が強く見られる。
『Nevermind』に比べ、カート・コバーンの世界を全面に押し出した結果、売り上げとしては前作に劣るんすよね?
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
まあ、そういう結果になったな。『Nevermind』の売り上げが現在までで4000万枚を超えてて、抜きようにも抜きようがないっていうのもあるがな。
それでも月子ちゃんは『Nevermind』よりも『In Utero』が好きなんすね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
そのとおりだ。商業ベースに縛られることなく、自分たちの好きな音楽を作る。これこそがニルヴァーナであり、インディーズの根本的な思想だ。
このアルバム、聴けばわかるんすけど、本当にリスナーを拒絶するような曲の構成になっているっすね。まず一曲目が「Serve The Servants」。日本語だと、「召使に仕える」。ミドル・テンポの音楽からダークさが溢れるに溢れていて、普通のバンドならば冒頭曲には持ってこないっすよ。売り上げにも関わってきますし。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
まったくそのとおりだ。そして二曲目が「Scentless Apprentice」。「無臭の見習い」。何と感想を言ったらよいのかわからない題名だ。しかもこの曲、ニルヴァーナの曲のなかでも、最大のシャウトを放つ。カート・コバーン自体、シャウトを多用する歌唱法を好んだが、この曲でのシャウトはもはや歌になっているのかわからない。
一曲目「Serve The Servants」を乗り越えたリスナーでも、この曲の不可解なサビで蹴落とされることも多いと思うっす。自分も初めて聴いたとき、「何事!?」ってなりましたからね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
題名と言えば、ニルヴァーナは曲に変わったタイトルをつけることで有名だった。ときには、歌詞の内容と関係のない題名をつけることすらあった。『In Utero』ではその傾向が顕著になっている。そもそも、「In Utero」というタイトル自体、尋常ではないからな。
特に奇妙なのは「Frances Farmer Will Have Her Revenge On Seattle」っすかね。直訳すれば、「フランシス・ファーマーはシアトルで復讐を果たす」っすからね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
「Milk it」や「Pennyroyal Tea」も歌詞も読めば、卑猥な意味だってわかるしな。
これまで、散々変なアルバム、変なアルバム、と言ってきたっすけど、三曲目の「Heart-Shaped Box」はニルヴァーナの曲のなかでも屈指の出来だと思うっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
それには私も同感だな。カート・コバーンの作詞作曲の集大成、という感じがする。この曲のMVも非常に良いできだから是非見て欲しい。キリスト教的退廃の世界で、嫌悪感を催すモチーフも多く出てくるが、生き生きと歌うカートの姿が見られる。
このMVのカート・コバーンは本当に鬼気迫る、迫真の表情をしているっすよね。それがカメラのピントを意図的にぼかす演出でさらに強調されている。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
まあ、このMVも人によっては嫌悪感があるだけだから、視聴は注意な。
はてさて、「怪作中の怪作」と呼ばれるこのアルバムを語ったすけど、その全容はまだまだ掴めないっすね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
『In Utero』はその作風から、永遠の問題作として後世に残り続けると思うぜ。