第七幕 フランツ・カフカ『城』



二十世紀の山巓に立つ作家、フランツ・カフカの代表作。

未完の作品となっている。

 

不吉と不安が全体に漂う小説『城』。プロットも今一つ不明瞭であり、その解釈は読者によって異なるとも言われるっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
この小説の肝が「城」とやらにあるのはわかる。村に測量士として主人公を呼んだのも「城」らしい。この主人公に勝手に二人の助手をつけたのも「城」だ。そして主人公の要請を拒絶して、「永遠に城には来るな」と言い放つのも「城」だ。一体、この「城」という組織は何なのだ?
何なのだ、と言われても答えに窮すっすね。まさしく、この「城」を巡る解釈が専門家によっても分かれるところなんすから。ただ、今回はあくまで個人的な意見として「城」に関する解釈を広げてみるっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
私だって、「城とはずばり、○○だ!」と言えるほど簡単な小説ではないことはわかっている。多少は抽象的な論も入ってくるだろうが、月子の私見を教えてくれ。
まず、「城」が村において絶対的な決定権を持っていることは、小説の節々から伺えるっすよね?
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
そうだな。なんと言ったって、村の重役はみな城にいるらしいからな。
村についての細事を決めることのできる人間はみな城にいる。だからこそ、主人公は「城」から測量士として招かれたんすからね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
もっとも、その設定も序盤でひっくり返されるがな。主人公は電話越しに、「城」から、「お前を呼んだ覚えはない」と言われてしまう。果たして、主人公と「城」、どっちの言い分が正しいのかは、作中で明かされることがない。
村人たちには当然、あらゆる面で決定権がない。主人公がいくら村での処遇を彼らに求めても、村人は「城に問い合わせてくれ」としか言いようがない。この無慈悲とも言える仕打ちが、主人公と村人のあいだのいざこざの発端になっているっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
まあ、こういうことは実際にもあるよな。例えば洋服店で気に入った服があったとする。しかし、自分に合うサイズまでは用意されていなかった。そのとき、店員さんに文句を言っても仕方がない。そのサイズを用意していなかったのは、別に店員さんが決めたことじゃないからな。店長とか、本店のお偉いさんが決めたことだ。
なかなか良い例を出すじゃないっすか。まさに村にとって「城」は絶対的な決定機関っす。その反面、「城」は決して表に出てくることがない。電話や手紙など、間接的な形で接触してくることはあるものの、実際に「城」のお偉いさんが出てくることはない。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
主人公が巻き込まれる問題もそうだが、村人たちの問題も本来ならば「城」のお偉いさんに直接問い合わせなければ解決しないものばかりだ。しかし「城」からは誰からも派遣されてこない。それどこか、こっちから出向こうと思っても、「永遠に来るな」と言われる始末だ。
そのために作中で掲示される問題はどれも解決の目処を見ず、すべてが宙づりのままにされるっす。このあたりが作中の不吉や不安の雰囲気を作り出しているっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
当然のことながら、「城」のお偉いさんが一向に登場しないようでは、主人公はまったく身動きが取れなくなる。助手という名目で二人の監視役までつけられて、いよいよ村から逃げ出すことすらできなくなる。
小説『城』で描かれていることは、この主人公が「城」に到達するために、村を右往左往するさまであるっす。主人公には宿すら用意されていない。だから主人公は雪が降り積もるような季節なのに、小学校の一室で凍えながら寝泊まりする羽目にもなる。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
村人のなかには、主人公に対して好意を示すものもいないわけではないが、彼らの話すことは一貫して不可解なことばかりだ。内容は「城」に関すること、この村の仕組みについて、そして彼ら自身の身の上話だが、そのどれもが釈然としない結論にたどり着く。
この物語は簡単に言ってしまえば、主人公が「城」に到達すれば、ほとんどの問題は解決するんすよ。ところが、「城」という組織は一向にその存在を表そうとしない。実在することは確かなんすよ。村に対して様々な決定を行い、主人公の境遇についても決定しているんすから。ただ、こちらから「城」に接触しようとすれば、それは永久に逃げ出す。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
「城」からの命令は常に一方的だ。主人公や村人はただただ「城」からの命令を遵守するしかない。もしもその命令に違反した場合の罰則はきちんと取られるのだからな。そしてその命令は本当に一方的なもので、こちらからの意見を言おうものなら、電話でなり、手紙でなり、「NO」の一言が返ってくる。
この小説の最大の問題は未完なところっす。しかも、非常に中途半端なところで終わっている。作中に展開される物語どころか、この小説自体、どこに向かっているのか、そしてどのような結末を見るのか自体が永遠の謎なんすよ。
小澤月子
小澤月子