第三幕 R.E.M.『Automatic for the People』

 

アメリカのオルタナティブ・ロック・バンド、R.E.M.の八枚目のアルバム。

死と内省を根底とした作りになっている。

玉置小絹
玉置小絹
七枚目のアルバムにあたる『Out of Time』のポップ・ミュージック路線からは打って変わり、フォーク・ロックを基盤とした音楽と死を根底とした歌詞によって構成された『Automatic for the People』。
怪作とも言える出来っすけど、人によってはR.E.M.のベストアルバムとして挙げることも多いっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
冒頭に掲げられた曲、「Drive」はサイケデリック・ロックとも言える音作りで、ボーカルのマイケル・スタイプが「Where Are You?(お前はどこにいる)」と繰り返し、問いかけてくる。
初めの曲からこちらの不安を煽ってくる構成になっているっすね。曲調も非常にダウナーだ。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
まさに『Automatic for the People』の導入に相応しい曲だと言える。そこから、「Try Not to Breathe」、「The Sidewinder Sleeps Tonite」と展開していく。
三曲目、「The Sidewinder Sleeps Tonite」はそれまでの二曲とは対照的に、明るい感じの曲調になっているっすね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
初めの二曲は聞きやすい曲とは言い難いが、ここに来て、ようやく耳障りの良い曲調に切り替わる演出になっている。
けれども、「The Sidewinder Sleeps Tonite」も歌詞を読めば、明るい曲とは言い切れないっすね。むしろ、歌詞のテーマは前の二曲と繋がっていて、人生の行き詰りを叫んでいるようっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
四曲目の「Everybody hurts」はこのアルバムのなかでも特に評価が高い。曲調も前曲から再び切り替わり、60年代のフォークやブルースに近いメロディで、ゆったりとしたものになる。
聞き心地は確かにいいんすけど、歌詞の内容は孤独を歌ったもので、皮肉と辛辣さが存在するっす。この曲は題名にあるとおり、「’Cause Everybody Hurts(だって、みんなが傷つけあうから)」に帰着するっすね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
五曲目、「New Orleanes Instrumental No.1」は題名のとおりインストゥルメンタル(楽器のみで構成された曲)だ。この曲で一度、アルバムの流れが途切れる仕組みになっている。
アルバムの前半は四曲目「Everybody Hurts」に注意が集中するように厳密な配置が為されているわけっすね。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
六曲目以降、『Automatic for the People』の世界観はさらに深まっていく。曲調はますます重苦しくなっていき、正直、聞きやすいとは言えなくなっていく。
それまで孤独や閉塞感から間接的に匂わせていた「死」も直接的に取り扱うようになるっす。はっきりと「death」や「bury」などの単語を使う曲もあれば、日常のふとした瞬間から死を引きずり出してくる曲もあるっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
十曲目、「Man on the Moon」は『Automatic for the People』のなかで、最高傑作と名高い曲だ。
これはアメリカのエンターテイナー、アンディ・カウフマンを主題に取った曲っすね。この人物は35歳で肺癌で急逝するんけど、それまでの作風から、この訃報もジョークの一つだと取られて、世間から死んだことを信じてもらえなかった、という逸話があるっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
曲の構成としては、ボーカルのスタイプがカウフマンに対して、様々な質問を繰り返す、というものになっている。そのなかの一つに「If you believe they put a man on the moon(人類が月に降り立ったなんて信じられるか)?」がある。
この「Man on the Moon」はそれまで、ただただ厳粛に受け止めるだけであった「死」を笑い飛ばす、という意味合いが強いっす。この曲があることによって、アルバムの残り二曲の存在が強調されていくっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
十一曲目、「Nightswimming」はその題名のとおり、夜を徘徊しながら、逃れられない不条理と対峙する人物の姿が描写される。そしてアルバムの最後となる曲、「Find the River」によって、孤独と閉塞感に閉ざされた人生のなかで、わずかな希望を見出す。
『Automatic for the People』は決して聞きやすいアルバムではないっす。そのためか、前作『Out of Time』をR.E.M.の最高傑作に推す声が強いっす。
小澤月子
小澤月子
玉置小絹
玉置小絹
だが、R.E.M.全体の死生観を十全に発揮している作品は、間違いなくこのアルバムだと思う。気が向いたときや、死にたくなったときには、この悲しいアルバムを聴いてくれ!